【News】ノーベル賞候補という信州大「ナノテク」に発ガン性隠蔽騒動

 

ノーベル賞候補という信州大「ナノテク」に発ガン性隠蔽騒動 - 週刊新潮 2010年5月6・13日号(2010/04/28発売)

表題の見出しが気になったので少し調べてみました。


ナノテク最新事情 #378 : Seaton教授がナノ材料の安全性への取組みの弱さを指摘 - nanonet 文部科学省 ナノテクノロジーネットワークセンター

Anthony Seaton 教授(Aberdeen University、英国の主要な環境健康の専門家の1人)は、小さな粒子を発散し、肺に入ると石綿症、中皮腫と肺がん他の病気を引き起こす「アスベスト」と「カーボンナノチューブ(CNTs)など特定のナノ材料」が類似し、生体系に有害な影響を及ぼす可能性があることを指摘したそうです。

(所見)

私たちにとってアスベストの教訓が充分に活かされているだろうか?
アスベストの毒性が認識され規制がしかれたのは1970年代になってからであるが、発病までの潜伏期間の長さ(中皮腫の場合約30年)により、その後も素材として利用され続けてきた。
科学者も企業人も役人も所詮、人間としての謙虚さを忘れ、驕りやすい弱さを持ち合わせている。しかし、潜伏期間がもっと短かったら結果は全く異なっていたであろう。
Stanton-Pottの仮説によれば、直径0.25μm以下、長さ8μm以上の繊維は発がん性を持つ可能性があるという。ナノ材料の有害性が科学的に実証されるまでには、長い時間を要するが、アスベストの教訓を踏まえた施策を展開して行くことが必要だろう。

(nanonet 豊蔵 信夫)



理系白書’07:第2部・科学技術は誰のもの/3 ナノテク、推進の影で - 毎日jp(毎日新聞)

21世紀の夢の技術。こんな代名詞で語られる先端技術「ナノテクノロジー」推進は日本の国策だ。官民一体となった取り組みの端緒ともいえる04年5月の「ナノテクサミット」で、大会宣言をめぐる水面下の動きがあった。大会宣言を作る過程で「ナノテクが社会に浸透した際に起きる安全性の問題を研究する」という内容を入れることが検討された。しかし、国策として盛り上げる時期に水を差すのはよくない、という意見が出て、その表現は見送られた。ある研究者は明かす。「省庁は政治家に配慮し、政治家は産業界の利害を背負う。国を挙げてナノテクで戦っていこうという時期に、安全性うんぬんという話はしづらい

国が二の足を踏む間、リスク研究を細々と続けていた研究者もいる。直径1ナノメートルの新素材「カーボンナノチューブ」(CNT)の製法を発明した遠藤守信・信州大教授はその一人だ。「作ったモノが安全かどうかは、誰かが勝手に判断すればいいという姿勢では発展が遅れる。技術が社会に出てから毒性などのリスクが分かれば、人類に危害が及ぶ。税金を使って研究している社会的責任がある」と遠藤さんは言う。

遠藤さんは、CNTのリスク評価を、研究と並行して進めてきた。しかし、その研究費確保は容易ではない。遠藤さんのナノ材料を使い、動物実験を10年以上続けてきた小山省三・信州大教授(生理学)は、公的研究費をたびたび申請したが「連戦連敗」。「米国の研究投資を機関銃に例えるなら、日本は一発ずつ弾を込めないと使えない38式歩兵銃だ」と皮肉る。



週刊新潮の記事はまだ読んでいませんが、今回の報道はこうした危険性を論文など研究結果報告から排除したことによるものなのでしょうか?毎日jpの記事をみると信大はリスク研究も行ってきたと書かれています。しかしながら研究とリスク評価を同一機関が行うことには当然無理があります。発明や研究成果の追求とその安全性の確認とは、相反する部分があるから。新技術が資本主義の舞台に乗ってしまう前に、地球や未来を考えたより巨視的な第三者的視点から検証できる公的機関が欲しいものです。




2010年6月3日追記

本記事投稿後、書店に足を運んだのですが、「週刊新潮 2010年5月6・13日号」は売切れで入手できませんでした。その後も気になっていたのですが、先ほど小山教授が信州大学と遠藤教授を提訴のニュースを知り、状況が把握できました。概ね想像していたとおりでした。


「研究無視」と信州大を教授が提訴 ナノチューブ安全性めぐり - MSN産経ニュース

 繊維製品や医療器具などに使われる炭素素材カーボンナノチューブの発がん性に関する研究結果を学内で不当に否定され、精神的苦痛を受けたとして、信州大の小山省三教授(生理学)が2日、大学と同僚の教授に慰謝料1千万円の支払いなどを求め、長野地裁松本支部に提訴した。

 訴状によると、小山教授はカーボンナノチューブの一種VGCFを開発した信州大の遠藤守信教授から依頼を受け、安全性を研究。平成20年6月、マウス実験で悪性中皮腫を確認したが、遠藤教授と大学はその報告を無視したとしている。

 訴えについて遠藤教授は「まだ内容が分からずコメントできない」、信州大の渡辺裕理事(総務・労務担当)は「小山教授の研究結果には学術的に疑問が多い。法的対応も検討する」と話した。


真実は当事者たちにしか知り得ないですが、悪性中皮腫を確認したマウス実験が鍵になるかと思います。第三者がその研究結果を考察し妥当性が認められたなら、それを無視した側の恣意的な思惑を裏付ける事になるので。いずれにしても、ノーベル賞候補の研究がスキャンダルの渦中というのは少し悲しいものがありますね。


★ News - ナノテク -


★ News - CNTs(カーボンナノチューブ) Cancer Risk(発癌リスク) -


★ 楽天 - カーボンナノチューブ -


★ Blog - 小山省三 遠藤守信 についてのブログ記事 -

コメント

  1.  現在の機械工学における構造材料の耐久性に対する主な問題点は強度ではなく、摩擦にある。島根大学の客員教授である久保田邦親博士らが境界潤滑(機械工学における摩擦の中心的モード)の原理をついに解明。名称は炭素結晶の競合モデル/CCSCモデル「通称、ナノダイヤモンド理論」は開発合金Xの高面圧摺動特性を説明できるだけでなく、その他の境界潤滑現象にかかわる広い説明が可能な本質的理論で、更なる機械の高性能化に展望が開かれたとする識者もある。幅広い分野に応用でき今後48Vハイブリッドエンジンのコンパクト化(ピストンピンなど)の開発指針となってゆくことも期待されている。

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  2.  境界潤滑といえばかつてあの有名な物理学者パウリが「固体は神が作り、表面は悪魔が作った」という言葉を思い起こしてしまうような、とてもデリケートな科学技術分野であり、その試験をするものはトライボロジストとして英国などでは崇められる存在。その原理的解明がなされたというのは機械工学者が半世紀近く見続けてきた夢を達成できた感があり、心から祝福します。

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