【News】2011年2月27日(日)NHK ETV特集「死刑執行 法務大臣の苦悩」について

 

昨日、2011年2月27日(日)に放送された NHK の ETV特集「死刑執行 法務大臣の苦悩」。番組途中から観たのですが、あまりに偏向的で気持ち悪い内容だったので記事を書くことにしました。

まずは下記が NHK による番組内容説明および趣旨になります。


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第343回 2月27日(日)法務大臣の決断 - NHK ETV特集


ETV特集 2月27日(日)

2010年7月28日、東京拘置所で2人の死刑囚に対する死刑が執行された。自民党政権での死刑執行から1年余りの空白を経て、民主党政権で初の執行だった。死刑執行の命令書にサインした法務大臣は、千葉景子(当時・以下敬称略)。就任前の千葉は一貫した死刑廃止活動で知られており、多くは千葉が任期最後までサインをしない姿勢を貫くものと考えていた。千葉はいかにして決断に至ったのか。その決断の背景には何があったのか。10時間を越えるロングインタビューに、千葉が初めて語った。
我が国では、死刑の執行は法務大臣の命令を必要とするが、最終判断者たる法務大臣の心中を一般の人が知ることはなかった。多くの市民は「死刑」を、国家による罰という抽象的な概念でしか捉えてこなかった
。しかしいま、裁判員裁判のもとで、すでに3件の死刑判決が下されているように、“市民”が死刑判決を下す重い義務を負う時代が訪れている。私たちにとってもはや「死刑」をめぐる問題は、他人ごとではない。大臣室で深まる苦悩、それは今まさに、市民の苦悩と重なろうとしているのだ。
番組はかつて明かされたことのない「法務大臣と死刑執行の決断」に焦点を絞る。千葉大臣による死刑執行の決断に至るまでの経緯を詳細に検証しながら、長い死刑執行の歴史の中で、命令書へのサインを前に繰り広げられた歴代法務大臣らのさまざまな苦悩と決断を、本人らの証言を交えて浮き彫りにする。加えて、死刑判決を下してきた最高裁判所元判事、死刑執行の義務を負う法務省元幹部、決断を下す法務大臣を支えた人たちによる貴重な証言もあわせ、多角的に検証する。



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千葉氏は平常時と異なり、終始ボソボソとゆっくりとした語り口調。しかし言葉を選んでという感じではなく、何を言いたいのか非常に分かりにくい。何か感傷を誘いたがっているようなパフォーマンス臭を強く感じた。


まず、なぜ死刑廃止論者である彼女が“最終的に”二名の死刑を執行したのか? 当該死刑執行についての臨時記者会見の内容から紐解いてゆきたい。


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法務省:法務大臣臨時記者会見の概要 - 法務省


法務大臣臨時記者会見の概要

平成22年7月28日(水)

 本日,私の命令の下に,篠澤一男,尾形英紀の2名の死刑を執行しました。この2名に関する犯罪事実の概略を申し上げますと,まず篠澤一男については,宝飾品店の店員を殺害して,宝飾品を強取しようと企て,同店店長ら6名の女性被害者に対し,その身体等にガソリンを散布するなどして,ライターで火を放ち,同店を全焼させるとともに,女性被害者6名全員を火傷死又は焼死させて殺害し,宝飾品を奪った,強盗殺人,現住建造物等放火事件です。尾形英紀については,自己の交際相手と肉体関係を持とうとしたのではないかと男性被害者を問い詰めたものの,これを認めないことに激高し,その背部,腹部を数回突き刺すなどして男性被害者を殺害し,さらにその状況を目撃するなどした女性被害者3名を失踪を装って殺害するため,車で連れ去った上,同女性被害者3名の頸部をタオル又はビニールロープで締め付け,うち1名に対しては更にその側胸部を包丁で多数回突き刺すなどして,女性被害者のうち1名を殺害し,2名に重傷を負わせた,殺人,殺人未遂事件です。このようにいずれの事件も大変残忍な事案でもあり,それぞれの被害者の御遺族の方々にとっても大変無念な事件であったと思います。そして当然のことではありますが,いずれの事件も裁判所において,十分な審理を経た上で,最終的に死刑が確定したものです。以上のような事実を踏まえ,慎重に検討させていただいた上で,死刑の執行を命令した次第です。今回の死刑の執行に当たりまして,私は自らが命令した執行ですので,それをきちっと見届けることも私の責任だと考え,本日の執行に立ち会ってまいりました。死刑の執行は適切に行われ,私自身,自らの目でそれを確認させていただき,改めて死刑について深く考えさせられるとともに,死刑に関する根本からの議論が必要だということを改めて強く感じました。そこで,今後の死刑の在り方について検討するために法務省内に勉強会を立ち上げることにします。私自身の下,法務省内の関係部局等によって構成することとしますが,開かれた場で幅広く外部の様々な方から御意見をお聞きをしたいと,御議論に加わっていただきたいと考えています。この勉強会はあらかじめ結論を決めて行うものではありませんが,死刑制度の存廃を含めた,死刑制度の在り方等を検討することを考えています。そして裁判員裁判によって刑事司法に対する国民の関心,あるいは自らが裁判で判断をされると,こういう責任を国民の皆様も負うことになっているという状況の中で,この勉強会の成果を公表し,死刑の在り方について,より広く国民的な議論が行われていく契機にしたいと考えています。また,刑場は厳粛な死刑執行の場ですので,本来一般の公開にはなじまないという指摘もあります。しかし,今述べたような,国民的な議論に資する観点から,今回,東京拘置所において,マスメディアの取材の機会を設けるよう私から今指示をしたところです。近くそのような機会を設けさせていただくつもりです。


死刑執行に関する質疑

Q:26日から民間人としての大臣となられました。この度の選挙は落選だったのですが,その際,これまでに行われてきた法務行政について民意の理解は得られなかったという指摘もありますが,このタイミングで死刑を執行された理由を改めてお願いします。
A:これは時間をかけて検討し,そしてまた問題がないかどうかを精査をさせていただき,その結果,このような時期になったということです。
Q:死刑執行のタイミングと御自身の選挙との関係がやはりあったと理解してよろしいですか。
A:全くそれはありません。それ以前から様々な検討をさせていただいていました。
Q:国民的議論については,昨日の会見でも具体的な行動についてはなかなか知恵がないとおっしゃっていて,引き続き検討をしていくというようなお話だったのですが,なぜ執行してから勉強会を立ち上げるなどの具体的な行動を起こすということになったのでしょうか。それ以前に国民的議論を深めようという行動なり努力というのはされなかったのでしょうか。
A:これも,これまでも申し上げてまいりましたように,どのような形で行えばいいのか,私なりに考え続けてまいりました。その一つの結果です。
Q:今日までの間に国民的な議論は,結局起こされなかったと思うのですけれども,いかがでしょうか。
A:これまでの間は,なかなかそこまで私も至ることができなかったのは確かです。今後,是非私たちも正面から議論させていただき,そして,それを受け止めて国民の皆様にも様々な議論の状況を御提供し,それに基づいた議論を様々な場で展開をしていただくことを願っています。
Q:死刑の執行に法務大臣が立ち会うのは今回が初めてのことですか。
A:分かりませんが,多分そうではないだろうかと思います。
Q:立ち会ったときの率直な心境とはどういうものだったのですか。
A:私はあくまでも指揮命令をした者として,自分の指揮命令をきちっと確認をするということで立ち会わせていただいたと,これに尽きることです。
Q:死刑の執行と勉強会の立ち上げというのはセットでなければならなかったのですか。執行しなくても立ち上げること,議論をすることはできたと思うのですけれども。
A:別にセットで考えたわけではありません。
Q:たまたま一緒になっているという,そういう理解でよろしいですか。
A:それで結構です。
Q:大臣は,参議院議員として,大臣就任前は死刑廃止を求める活動に一生懸命取り組んでこられたと思いますが,今回,死刑廃止を求める御自身の信念を曲げることをされたわけですが,信念を曲げて署名したことについて,心境をといいますか,その辺をお願いします。
A:私も死刑の問題について,様々な議論の下で廃止をするという方向があれば,それは一つの方向性だろうと,そのために私もいろいろな議論に参加をしてきました。これからも多くの皆様との議論の中で,廃止という方向が出れば,それはまた一つの国民的な回答だろうというふうに思います。そういう意味では,決して私が何か考え方を異にするということではありません。これまでも,方向としてはそういうことがこれから求められていくのだろうというふうに考えていましたけれども,法務大臣としての職責が定められているということを承知をしながら大臣職を務めさせていただいてきたということです。
Q:これまで慎重に検討されるということをおっしゃってきて,今回執行を決めたという一番の理由は何なのでしょうか。
A:これは様々な要件,あるいは状況,こういうものを,この間,検討させていただいてきた,その結果だということです。
Q:具体的には。
A:いろいろな要素があります。
Q:今日,二人の死刑の執行を御覧になったということでよろしいですか。
A:はい。それぞれ立ち会わせていただきました。
Q:順番は,どういう順番でしょうか。
A:申し上げたとおりです。
Q:残りの死刑確定者は107人ということでよろしいでしょうか。
A:現在107人です。
Q:今後勉強会を立ち上げて,議論を深めるということですが,その議論である程度の結果が出るまで,また次の執行というものは考えないということなのでしょうか。
A:今それを申し上げることはできません。
Q:野党の一部に,大臣の落選後から,問責決議案を出そうという意見もありますけれども,9月の代表選後に辞めることが分かっている大臣がこのタイミングで死刑執行を行ったことについて,問責決議案を出すという意見もある中で,このタイミングで行ったことによる影響といいますか,それからそういう政治的な動きへの影響など,それが出された場合の対応をお聞かせください。
A:今回のことはこれまで検討をさせていただき,そしてその結果として執行に至ったという,これだけです。
Q:勉強会についてなのですが,大臣が議論するのでしたら,大臣が在職する間に日程の目途や,あるいは方向性を出してもらいたいという御意思はあるのでしょうか。
A:そんなに簡単に私は結論が出るとはなかなか思いません。ただ,やって何にもならないというようなことがあってはならないと思いますので,そこはできるだけ,精力的に,そしてまたいろいろな御意見も聞き,あるいは発信をし,そして議論を進めていかなければならないというふうに思います。
Q:本日の死刑執行に立ち会われて,感想というのは難しいと思いますけれども,驚かれたこととかおかしいと思ったこととか,想像と違っていたこととか,何か一つでもございませんでしょうか。
A:執行については,個別な私のコメントは差し控えさせていただきます。
Q:本日の執行に至ったというのが,予算委員会や問責決議案が参議院で出されたりということについて,批判をかわすといった意味合いはなかったのでしょうか。
A:全くありません。
Q:選挙前から検討をされていたということですけれども,勉強会はまだなかったのですから,検討というのは,省内で大臣を含めてどのような形で検討されたのか具体的にお願いします。
A:当然のことながら,記録を精査する,あるいは今の実情などの報告をもらう等々の検討を続けてきたということです。
(以上)



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法務省にある上記の記者会見内容の中で注目したいのは「刑場は厳粛な死刑執行の場ですので、本来一般の公開にはなじまないという指摘もあります。しかし、今述べたような、国民的な議論に資する観点から、今回、東京拘置所において、マスメディアの取材の機会を設けるよう私から今指示をしたところです。」という部分。死刑廃止論者であれば自身の信念を全うして死刑を執行しないまま大臣の職を退くことができたのに、マスメディアに刑場を公開して(死刑廃止の方向で)国民的な議論に資する機会を設けたいが為に死刑を執行したということ。つまり大臣の職務を果たすということではなく、パフォーマンスの為に判が押されたのです。

また、死刑執行に先立つ参院選において神奈川選挙区から立候補し落選した千葉景子前法務大臣は、仙石前官房長官から「(死刑廃止という?)行政の継続性という観点から、続けていただくことが望ましい。」と落選後も法務大臣の椅子から降りませんでした。このことに対する風当たりを軽減する意図もあり前もって死刑執行を行ったのでしょう。



番組の話に戻ると、ナレーションが「千葉景子さん」と敬称をつけて連呼していたのがまず違和感。法務大臣時代の話でありながらことさら一般人を強調し苦悩を描きたいかのような。死刑廃止論者側の一方的に感傷を誘うような作りで公平ではない。そして言いたいことがよく分からないお涙頂戴的インタビューの後はある死刑囚が書いた手紙の一部が読み上げられます。「死を受け入れる代わりに反省の心を捨てました。死が決まったら反省の意味はない。罪を背負って生きてゆくことが本当の意味での償いではないか?」というような至極自分に都合の良い内容。つまり反省はしていないということなの?



(番組の前半を観ていない為間違っていたらゴメンナサイですが、)この番組は構成に問題があり議論のきっかけを与える目的としては大いに不適切である。番組の最後で「(死刑制度について)市民が考える材料が限られている」と結ぶのであれば、

① 死刑廃止論者の千葉前法務大臣だけではなく、その他の法務大臣経験者のインタビューも同じボリュームでとるべき
② 死刑囚の主張を取り入れておきながら、遺族の苦悩についての言及が無い
③ 裁判で死刑の判断が下された材料、つまり罪の内容についても詳しく触れるべき



については NHK の番組紹介に

長い死刑執行の歴史の中で、命令書へのサインを前に繰り広げられた歴代法務大臣らのさまざまな苦悩と決断を、本人らの証言を交えて浮き彫りにする。

とあるので自分が観れなかった部分で触れられているかもしれません。もしなかったとしたら当初の番組構成から千葉氏側にカットされたのかも。当然チェックが入っているはずなので。

また、

多角的に検証する。

については遺族感情を無視し犯行内容は伏せ死刑囚の身勝手な主張は採り入れ、廃止論側の一方的な主張となっており疑問符ばかりの内容。


記者会見でもあったように「(死刑廃止の方向で)国民的な議論に資する観点から」千葉氏サイド(または後任の江田五月法務大臣も引き続き死刑廃止論者なので民主党)が番組制作を依頼したといわれてもおかしくないような偏向的内容で、NHK の資質を疑いました。


最後に自分と同じように違和感を覚えた方が早速「Yahoo!知恵袋」に質問をたてられていました。

「法務大臣の苦悩」 - Yahoo!知恵袋

NHKのETV特集『死刑執行 法務大臣の苦悩』が現在、放送されていますが、あまりにも... - Yahoo!知恵袋


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犯罪の世界を漂う

事件史探求


事件の捜査上で冤罪はあってはならないが、その可能性がゼロになることはない。しかし上記サイトなどで紹介されている殺人事件のように、常人の常識から大きく逸脱し善悪のタガが外れた凶悪な殺人犯が多数生まれてきているのは紛れもない事実。何人もの人たちの命を奪った囚人が、獄中で何の心配もなく日々の生活に困ることなく反省することなくのうのうと生涯を全うするのはどんな倫理観であり正義観なのだろう?

人は自分の行いに責任を持たなくてはならないし、殺人を犯した責任の取り方が無期懲役ないし終身刑なのであれば 殺人犯の命 > 被害者たちの命 という“命の不平等”、“生存権の不平等”となる。たとえ死刑であっても不平等なのだが。


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「死刑制度に関してこのような意見がありますが、あなたはどちらの意見に賛成ですか」
(2004年12月内閣府実施「基本的法制度に関する世論調査」)

■(ア)どんな場合でも死刑は廃止すべきである ‐ 6.0%
■(イ)場合によっては死刑もやむを得ない ‐ 81.4%
■ わからない・一概に言えない ‐ 12.5%
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きっと両手を挙げて現在の死刑制度に賛成している人はいまい。この世から凶悪事件が無くなり、結果死刑囚が居なくなるのが一番望ましいのですが。また、凶悪事件が無くならならず、上述したように世論の大多数が死刑はやむを得ないと考えている現状で強硬な死刑廃止論が進む背後には、廃止論者がよりどころとしている「①死刑廃止へと向かう世界の潮流」「②死刑制度が抱える誤判防止制度の欠如、死刑囚に対する人道上の問題等の基本的人権侵害に対する擁護」以外になにか隠された意図があるのではないかと疑ってしまう。


死刑存廃問題 - Wikipedia

死刑 - Wikipedia

死刑廃止を推進する議員連盟 - Wikipedia



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